東京都新宿区で昨年3月、路上ライブ配信中の「最上あい」こと佐藤愛里さん(22)が刺殺された事件で殺人などの罪に問われた栃木県小山市の職業不詳・高野健一被告(44)の裁判員裁判が1日、東京地裁(井戸俊一裁判長)で始まった。
高野被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、「本当に申し訳ありませんでした」と謝罪した。検察側の証拠調べで、高野被告が女性に負わせた傷が61か所にものぼることを明らかになった。

「山形のキャバクラで77万円使い、約254万以上貸した」
起訴状などによると高野被告は昨年3月11日午前9時50分ごろ、JR高田馬場駅近くの路上でライブ配信していた佐藤愛里さん(当時22歳)に持参したナイフで襲い掛かり、顔や腹などを複数回刺して殺害した。 佐藤さんは「最上あい」という名義でスマホの配信アプリを使って動画ライブを配信する「ライバー」として人気で、当時は山手線一周を徒歩で回るというライブイベントを配信中だった。 入廷した高野被告はワイシャツに青色ネクタイに黒色スーツ姿で、坊主頭が少し伸びたような髪型だった。中肉中背で猫背気味の高野被告は裁判長に促されて証言台に立ち、検察官が起訴状を読み上げると「間違いありません。大変申し訳ありませんでした」と声を震わせた。 続いて行われた検察側の冒頭陳述によると、高野被告は2021年12月ごろにライブ配信サイトで佐藤さんと出会い、サイト内の投げ銭を繰り返したことでLINEで直接連絡を取り合う関係となる。 2022年8月ごろには栃木県から佐藤さんの勤務する山形県のキャバクラに合計4回通って77万円を支払い、翌9月ごろからは佐藤さんに金を貸すようになった。総額254万円以上を貸したが返済されたのは3万円のみだった。2023年8月、高野被告は佐藤さんの口座を差し押さえるために民事裁判を起こしているが、佐藤さんの口座には160円余りしかなかった。 同年11月、佐藤さんが婚約者である事務所社長との結婚を報告。こうしたことから高野被告は佐藤さんへの復讐を決意、2025年2月に通販サイトでナイフを購入し、佐藤さんが山手線を一周しながらライブ配信する計画を知って、そこを襲撃した。

「月収100万クラスなのに口座は160円」
これに対して弁護側は冒頭陳述で、高野被告は大学中退後に就職したものの人間関係を理由に退職、統合失調症の診断を受けて月7万円の障害年金を受給しながら生活していたことを明らかにした。ライブ配信サイトで知り合った佐藤さんからLINEの交換を提案され、1か月も経たないうちに直接会おうと誘われて山形県内のキャバクラに通って総額77万7,420円を支払った。 その後も佐藤さんから「バイト先に財布を忘れてしまい取りに行けない。手持ちがない」「キャバクラの店長からの圧力で10万円のシャンパンをおろせと言われた」「携帯代が払えない」といった理由で借金を申し込まれ、23日間という短期間に約254万円を貸した。 この際佐藤さんは、高野被告に消費者金融で金を借りて自身に貸すよう求め、当初は「大好き」などのメッセージを返していた。しかし、佐藤さんから返信がこなくなったため、高野被告はSNSを通じて佐藤さんに返済を求め、一度だけ、3万円が返済された。 佐藤さんはライブ配信をやめたが、高野被告は佐藤さんが借金を返済してくれると信じていたので、毎月1度は通帳に記入をして返済の有無を確認していた。一度、佐藤さんに電話をしたところ、途中で元婚約者の男性が代わりに出てきて「ライブ配信をしたいので、佐藤のことをSNSに書かれては困る」と告げられた。 その翌日、警察に相談し、民事訴訟を起こして佐藤さんの口座を差し押さえたものの、口座の残高は160円しかなかった。佐藤さんは、ライブ配信アプリで月収100万円クラスのランクに位置付けられていた。しかし、収入を差し押さえることもかなわず、佐藤さんの配信を見て襲撃を決意した。 弁護側は犯行内容については争うことはせず、以上の情状面を考慮した上での量刑判断を求めた。

被害の詳細がモニターに映し出されると、高野被告は…
この後、検察側は高野被告が通行人のいる路上で配信中の佐藤さんを1分間にわたってメッタ刺しにし、佐藤さんが一度は「助けて」と叫んだもののすぐに声を出さなくなったことなどを説明。 証拠調べでは、凶器は刃渡り12.6センチのナイフで、被害の詳細として当時22歳の佐藤愛里さんは身長153センチ、体重51.3キロで、死因は首元の貫通創、確認された傷口は頭部8か所、顔面7か所、頸部8か所、胸腹部7か所、背面6か所、左右の腕から手のひら25か所の計61か所で、最も深い傷は9センチにも達していたことが明らかに。 佐藤さんが受けた被害の詳細がモニターに映し出されると、高野被告は直視できなかったのか、ハンカチで何度も額を押さえ、視線が定まらない様子を見せた。 初公判の午前の部はここで終了。放心したような表情を浮かべた高野被告は退廷を促されると、指を机について身体を支えながら立ち上がり、ふらふらと法廷を後にした。 ※「集英社オンライン」では、今回の事件について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(Twitter)まで情報をお寄せ下さい。



