産まれたばかりの娘を抱えて退院した日、玄関先で夫と見知らぬスーツの男が待っていた。夫は私に写真の束を投げつけて言った。「これが不倫の証明だ。DNA鑑定書もある。そいつは俺の子じゃない」—…

産まれたばかりの娘を抱えて退院した日、玄関先で夫と見知らぬスーツの男が待っていた。夫は私に写真の束を投げつけて言った。「これが不倫の証明だ。DNA鑑定書もある。そいつは俺の子じゃない」—...

産院で娘を抱きしめた瞬間、痛みなんて吹き飛ぶほど嬉しかった。でも夫の充は、生まれたばかりの娘をじっと見つめたまま、一度も触れようとしなかった。そして私が手を差し伸べると、それを振り払ってこう言い放ったのだ。
「帰ったら話がある。覚悟しておけよ」
私はただ機嫌が悪いだけだと思っていた。疲れ切っていて、それ以上考えられなかったのだ。
その後、義両親は毎日のように病院へ来てくれた。孫を一目見て涙を流し、「こんな可愛い孫を産んでくれてありがとう」と喜んでくれた。でも充だけは一度も来なかった。連絡しても「忙しい」の一言だけ。
そして退院の日。義両親の車で家に着き、玄関を開けた瞬間、義両親が石のように硬直した。中の様子を覗くと、そこには暗い表情の充と、見知らぬスーツの男がいた。男は微笑みながら名乗った。
「秋本充さんの奥様の不倫の件で担当させていただきます。弁護士の赤坂と申します」
不倫なんて、全く身に覚えがない。私は大学時代から充一筋だった。間違いだと言うと、充は写真の束を私に投げつけた。そこには見知らぬ男と私が手をつないで歩いている姿が写っていた。もちろん加工だ。充は怒鳴った。
「これが不倫の証明だ。DNA鑑定書もある。そいつは俺の子じゃない」
私はその場を飛び出した。娘を抱きしめたまま、泣きながら。義父の「待ってくれ」という声も、もう届かなかった。
親友の美奈に連絡すると、彼女はすぐに車で迎えに来てくれた。事情を話すと、美奈は自分のマンションの一室を貸してくれると言い、弁護士を雇って戦うことを提案してくれた。そして彼女の兄の友人だという佐木弁護士を紹介してくれた。
充からは離婚を求めるメールが届き、義両親からは何度も電話があった。義両親は事情を聞くと、全面的に協力すると言ってくれた。佐木さんに依頼し、経緯を伝えると、彼は首を傾げた。
「何だかおかしいですね。名刺はもらいましたか?」
私はもらっていなかった。佐木さんは義父から届いたメールの鑑定書を一目見て、難しい顔をした。
「文章が不自然すぎる。偽造の可能性が高いですね」
私は探偵事務所を紹介してもらい、充の身辺調査を始めた。
それから一か月後、痺れを切らした充と赤坂が美奈のマンションに乗り込んできた。充は「罪を認めて離婚しろ」と怒鳴る。そこへインターホンが鳴り、佐木さんと義両親が入ってきた。義父に引きずられるように、若い女性も一緒に来ていた。
女性を見た瞬間、充の顔色が真っ青になった。
「彼女がいた方が話が早いでしょ」
私がそう言うと、充は「知らない」と白を切った。私は調査報告書を見せた。そこには、充が不倫をしていた事実が書かれていた。そう、不倫していたのは充の方だったのだ。彼女は充の会社の後輩で、私の妊娠中に男女の関係になったらしい。そして二人は私が不倫したことにして慰謝料を奪い取り、再婚するつもりだったのだ。
義父が怒鳴った。
「お前というやつはどれだけ大バカ者なんだ。お前の計画はもうバレてるぞ」
すると充は「誘惑されただけだ」と、簡単に浮気相手を裏切った。私はさらに、浮気相手が本命の男と組んで充に近づいたという調査結果も渡した。浮気相手は、充の実家が有名な資産家だと知って近づいたのだ。
騒ぐ二人を制して、佐木さんが聞いた。
「で、あなた方が用意した証拠はどこから?」
「これが偽装なら警察案件になりますよ」
その言葉に赤坂は土下座して泣き出した。
「頼まれただけで、俺は何も知りません」
写真は全て加工、鑑定書もネットから拾ったものだという。弁護士ですらなかった。
私は言い放った。
「いい加減にして。どれだけ人に迷惑をかけてると思ってるの?絶対に許さないからね」
充は「離婚はしない」と言い出し、許しを乞うた。でも、もう無理だった。すると義母が突然、充を平手打ちした。
「かこさんの気持ちを何だと思ってるの?」
義母は涙を流して何度も私に頭を下げた。義父は充に言い渡した。
「みつる、お前はもう息子でも何でもない。好き勝手に生きていけ」
絶縁だ。充は私に両親を説得してくれと頼むが、私は首を振った。
「私も同じ気持ちです。これからのことは佐木さんを通してください」
佐木さんは「これからどうなるか楽しみにしておいてください」と言って、泣きわめく三人を部屋から追い出した。
その後、私は充と離婚が成立し、慰謝料も受け取った。充たちは証拠偽造の件で法的に訴えられることになる。義両親は私と親子の縁を結び、今は四人で仲良く暮らしている。散々な目にあったけれど、こんなに優しい人たちに巡り合えて、私は今、とても幸せだ。

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