葬式の最中、私は受付の香典箱を開けて、固まった。中身がほとんど空だったからだ。へその夫が突然倒れて亡くなり、悲しみに暮れる中での盗難事件。親戚全員が犯人を探す中、防犯カメラに映っていたのは、夫の妹だった。電話で問い詰めると、彼女は笑いながら言った。「バレちゃった。少し借りただけだって」。反省の色など微塵もないその態度に、怒りで震えた。しかし、それを許さないと決めたのは、それから一年後のことだ…

葬式の最中、私は受付の香典箱を開けて、固まった。中身がほとんど空だったからだ。へその夫が突然倒れて亡くなり、悲しみに暮れる中での盗難事件。親戚全員が犯人を探す中、防犯カメラに映っていたのは、夫の妹だった。電話で問い詰めると、彼女は笑いながら言った。「バレちゃった。少し借りただけだって」。反省の色など微塵もないその態度に、怒りで震えた。しかし、それを許さないと決めたのは、それから一年後のことだ...

葬儀の最中、受付で香典の箱を確認したとき、私は自分の目を疑った。中身がほとんど空になっていたのだ。 慌てて親戚中に尋ねると、誰もが驚き、誰がそんなことをしたのか分からなかった。 あの日、空は重く曇っていた。まるで私の心を映すかのように。夫の賢太はバスケットボールの練習中に突然倒れ、そのまま帰らぬ人となった。 私は31歳の専業主婦で、賢太との間に息子の涼がいる。母を幼い頃に亡くした私は、家族との時間を何よりも大切にしたいと思い、専業主婦を選んだのだ。賢太との結婚生活、涼の誕生、そして何気ない日常の一つ一つが、すべて私の宝物だった。 そのすべてが、一瞬で崩れ去った。

葬儀の間中、私は涙を堪えながら賢太との思い出を振り返っていた。涼はまだ父の死を理解できず、小さな手で私の手を握りしめ、泣きじゃくっていた。義両親も深い悲しみに沈み、義母は賢太の写真を見つめながら静かに涙を流していた。

そんな中で起きた香典盗難事件。親族一同が犯人を探し始めたが、手掛かりはなく、葬儀は重い空気のまま静かに終わった」

しかし、私はあきらめられなかった。翌日、私は葬儀場を訪れ、防犯カメラの映像を確認させてもらった。 画面に映っていたのは、賢太の妹、あゆみの姿。彼女が香典箱に手を伸ばし、中から金を取り出しているのがはっきりと見えた。 私はすぐにあゆみに電話した」

「あゆみちゃん、あなたが香典を取っているところが防犯カメラに映っていたわ。どういうことなの?」

電話の向こうから、軽い笑い声が聞こえた」

「あはは。バレちゃった。少し借りただけだって」

あゆみに反省の色は一切なかった。 私は怒りを押し殺して言った」

「借りただけ?そんなことが許されると思っているの?」

「そもそもみささんのお金じゃないじゃん。お兄ちゃんのお金じゃん。お兄ちゃんから借りてるの」

「その言葉に、私は言葉を失った。あゆみはこれ以上話すことなく、一方的に電話を切った」

あゆみは賢太の妹で、昔から何度も賢太にお金を借りては返さず、ここ数年は疎遠になっていた。 その彼女が、兄の葬儀で香典を盗んだのだ。 怒りで震える思いを押し殺し、私は義両親に真実を伝えた。義父は激怒し、聞いたこともないほど声を荒げた」

「なんてことをしてくれたんだ。あいつは昔からどうしようもない。もう娘じゃない」

「結局、香典は義両親が私に支払うという形で収束した。私は、皆から賢太に宛てた香典が戻ってくればそれでいいと思っていたが、まさかこんな形になるとは思わなかった」 その後、あゆみと親戚たちは疎遠になった**

賢太を失った悲しみの中、義両親は頻繁に家を訪れ、家事や涼の世話を手伝ってくれた。特に義母は、私が感情的に辛い時にいつもそばにいてくれたし、義父は休日になると涼を公園や水族館に連れて行ってくれた。 彼らの支えがあったからこそ、私は少しずつ日常を取り戻すことができた」

しかし、事態は急に動き出す。それは賢太の一周忌で、義両親の実家に親戚が集まっていた時のことだった。家の中は賢太を忍ぶ温かい雰囲気に包まれていたが、その静寂を破るように一本の電話が鳴った。電話の相手は、あゆみだった」

「ああ、私結婚することになったから一応伝えとくね」

久しぶりの連絡に親戚たちが驚く中、あゆみは続けた」

「結婚式には参加しなくていいから、ちゃんと親としてお金は出してよ。結婚式は親が支払うのが当然だから」

義父は呆れて言った」

「お前、何を言っているんだ?一度も挨拶にも来ないで、急に連絡してきたと思ったら…」

「だから、金だけ出してくれたらいいから。結構有名なホテルでやるから、よろしく」

そう言い残すと、あゆみは電話を切った。その場で、親戚一同は決意した。あゆみへの復讐をすることに」

彼女の婚約者は大企業の御曹司だと分かり、親戚たちは密な計画を練り上げた。あゆみのこれまでの行いを改めて聞くと、本当にどうしようもない女だと痛感した。賢太の実の妹でありながら、兄の最後を台無しにされたことが、どうしても許せなかった」

結婚式当日、大きなホテルの式場は華やかに装飾され、豪華なシャンデリアが天井から輝いていた。庭園には色とりどりの花が咲き乱れ、噴水の音が静かに響く、まさに夢の世界だったが、私の心には一つの怒りがくすぶっていた」

私は受付に立ち、ご祝儀を渡す時に、あゆみに皮肉を込めて伝えた」

「あゆみちゃん、ご祝儀がなくならないように気をつけてね」

彼女は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに笑顔を作り直した」

「大丈夫よ、みささん。今回は私が主役だからそんな心配いらないわ。それに、私の旦那はお金持ちだし、どうせ大した金額も入ってないご祝儀なんて興味ないって」

私は込み上げる感情を押し殺し、その場を去った。親戚たちが集まる中、あゆみは両親に対しても嫌みを言い始めた」

「わざわざ来なくても良かったのに。一人参加するだけでいくらかかると思ってるの?その分ちゃんと払ってよ」

「か、向こうの両親とは格が違うんだから、絶対に恥をかかすようなことはしないでよ。あんたらは空気になってればいいから」

その言葉に、私の胸は再び怒りで締め付けられた。彼女自身への怒りではなく、大切に育ててくれた両親を侮辱したことが、何よりも許せなかった”

会場に入ると、新郎側の出席者は家族、友人、職場の同僚などで大変賑やかだったが、あゆみの側には極端に少ない人数しかおらず、その孤独さが目立っていた」

結婚式が順調に進行する中、親戚たちは計画を実行に移そうとしていた。私の役割は、会場に流すデータを式場スタッフに渡すことだった」

「当日すいません。新婦側のお祝いに、サプライズでこちらを流したいんですけど」

「かしこまりました。では、お色直しのタイミングでスクリーンに映させていただきます」

これから起こることを想像すると、鼓動が早まった。いつもは食べることのないフレンチ料理が運ばれてきても、食事が喉を通らない」

結婚式は滞りなく進んでいたが、ついにその時がやってきた」

「ここで新婦側よりサプライズのお祝いがありますので、是非皆様ご注目ください」

司会者の声が響き渡り、会場は拍手に包まれた。あゆみは不安げな顔でつぶやく」

「は?何言ってんの?聞いてないんだけど。勝手なことすんなって」

親戚の一人が立ち上がり、舞台に上がってマイクを手に取った。会場が静まり返る中、彼は冷静な声で話し始めた」

「皆様、今日はお集まりいただきありがとうございます。この度はご結婚おめでとうございます。新郎様のご家族やご親戚の皆様にも心よりお喜び申し上げます」

「結婚式という素晴らしい時間に、大変心苦しいのですが、新郎様にはどうしてもお伝えしておかなければならないことがございます」

「あゆみさんが、これまでにどれだけの問題を引き起こしてきたか、皆さんに知っていただきたいのです」

あゆみは同揺し慌てて立ち上がった」

「ちょっと待って。何を言ってるの?やめて」

しかし、式場が安転し、スクリーンに映像が映し出された。映像は、賢太の葬儀の時に親戚が撮った動画だった」

「昨年、あゆみさんのお兄様がお亡くなりになりました」

会場は一瞬で静まり返り、全員がスクリーンに注目した」

「お兄様を忍ぶ中、考えられない事態が起きました」

次の瞬間、画面が変わり、別の映像が映し出される。映像には、あゆみが賢太の葬儀で香典を盗む瞬間がはっきりと映っていた。会場にどよめきが広がり、皆が驚愕と不信の視線を向け始めた」

「お兄様との最後の時間に、あゆみさんは何食わぬ顔で香典を持ち去ったのです」

あゆみの顔はみるみる青ざめていき、必死な顔で弁解を始めた」

「違うって!これは受付を担当していて香典を回収しただけよ!兄の葬式だから手伝いくらいするわよ」

会場内は騒然とし始め、その他にも次々と彼女の悪業が証言されていく」 ある親戚は、あゆみがバイト時代にレジからお金を抜き取り、訴えられた過去を話した」 別の親戚は、彼女に貸している多額のお金が一切返済されない事実を述べた」

「あゆみさん、これはあなたが過去に犯した問題行動のほんの一部です。だけど、賢太の葬儀で香典を盗んだことは、決して許せません」

親戚の一人が言い放つと、会場はさらに騒然となった。新郎の家族も驚きと怒りを隠せず、新郎も彼女の本性を知り、動揺していた。彼は立ち上がり、あゆみに対して言った」

「あゆみ、君がこんな人間だったなんて信じられない。ずっと騙していたのか」 君の両親への挨拶に行かせてくれなかったのは、悪事がバレることを恐れていたからなのか」

「違うわよ!みんなでっち上げよ!私がそんなことするわけないじゃん!」

新郎の母親は涙を浮かべながらつぶやいた」

「私たちはあなたを信じていたのに」

「新郎の父親も怒りを抑えきれず、体を震わせながら、あゆみに厳しく言い放った”

「あゆみさん、あなたの行動は許されるものではありません。あなたが今後どう生きるかは分かりませんが、少なくとも我が家に迎え入れることはできません」

「父さんの言う通りだ。君とは結婚できない。これ以上君と一緒にいることはできない」

新郎は冷静にそう告げた。あゆみは絶望的な表情で新郎を見つめ、叫んだ」

「こんなの作り話よ!私ははめられているの!ずっと一緒にいたいって言ってたじゃない!あの言葉は嘘なの?」

しかし、彼女の言葉を信じる者は会場に誰一人いなかった” 会場にいる友人や職場の上司たちも、彼女の過去の行動を知り、次々と声を上げ始めた”

「あゆみ、本当なの?」

「君にはもう失望した」

「最低じゃん”

あゆみはその言葉に耐えられず、涙を流しながら会場を見渡したが、誰一人として彼女を慰める者はいなかった” 彼女は私を見つめ、憎しみのこもった声で言った”

「あんたのせいよ!私がこの結婚式にたどり着くのに、どれだけ苦労したと思ってんのよ!嫌なことだって我慢して、ようやく金持ちと結婚できるところまで行ったのよ!」

私は冷静な声で返した」

「あなたの行いがこの結果を招いたのよ。自分の過ちを認めてください」

あゆみの友人たちも彼女を避けるように距離を置き、職場の同僚や友人たちは、彼女への信用を完全に失ったことを示すかのように、冷ややかな視線を送った” 会場は騒然となり、新郎の家族はすぐに会場を後にし、結婚式は中止となった” あゆみは孤立し、完全に信頼を失った状態で、その場に立ち尽くしていた”

後日、新郎の家族は結婚式の中止に伴う損害を彼女に請求した” さらに、会社にも彼女の悪業の噂が広まり、退職を余儀なくされた” 退職のタイミングで内部調査が行われたようで、結局会社の経費を横領していたことが明るみに出て、裁判沙汰になったと聞いた” あゆみは追い詰められ、両親や私に泣きついてきた”

「父さん、お母さん、みささん、お願い!助けて!私本当に困っているの!」

涙ながらのあゆみの訴えにも、私たちは一切協力できないことを伝えた”

「あゆみ、自分で巻いた種は自分で刈り取るしかないのよ」

「お前にはもう何もしてやれない” 自分で反省して、生き直すしかない」

義父も義母も厳しく言い放ち、そのまま家のドアを閉めた” 噂で聞いたのだが、あゆみはホストに溺れ、多額の借金を重ねていたようだ” 借金も膨らむ中で、あちこちで金銭トラブルを起こしていたらしい”

結局、賢太の香典は戻ってこなかったが、今はもうすっきりとした気持ちだ” その後も義両親は変わらず協力的で、私たちの家族を支えてくれている” 特に孫である涼にはたっぷりと愛情を注ぎ、彼の成長を温かく見守ってくれる” 涼も祖父母に対して深い信頼と感謝の気持ちを抱き、家族の絆はますます深まった” 親戚の支えを受けながら、新しい生活を過ごしている” 涼は学校で友達がたくさんできた” また、賢太の後を追うようにバスケも始めた” 涼のユニフォーム姿は、賢太にそっくりだ” 今では、涼の試合を見に行くのが私たちの楽しみの一つになっている” 義父は涼の写真を撮るために張り切って、高価な一眼レフまで購入した” 義両親との絆は今まで以上に深まり、今では私の親同然の存在だ” そしていつの日か、あゆみが本当に反省し、新しい人生を歩むことができるようになることを、心の隅で願っている” 私たちは日々の幸せを大切にし、前向きに歩んでいる”

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