結婚してから、夫の陽司は別人のように変わった。毎日のように暴言を吐き、ひどい時には手を挙げることもあった。さらに、嫁いびりの激しい義母との同居を勝手に決め、私の部屋を義母に使わせると宣言した。「お前の部屋は母さんに使ってもらう。お前は玄関でも寝ろ。」私はその言葉を受け入れ、玄関で寝続けた。その結果、陽司の人生は大きく変わることになる。
私は飯塚三葉、26歳。新卒で入社した会社で陽司と出会った。陽司は8歳年上で、仕事もできて、若い私からすれば大人の男性だった。口調も穏やかで、同僚からも人気の上司だった。もちろん私も陽司に憧れていた。ある日、彼が直属の上司になり、とても嬉しかった。一緒に仕事をするうちに気が合うことがわかり、プライベートでも会うようになり、交際に発展した。そして現在、結婚して1年ほどになる。
私はこれによって陽司の裏の顔を知ることになった。だが、それは誰にも言えない。みんな陽司がいい人だと信じているため、私の味方は誰もいないからだ。陽司の言う通りにしておけば、全てがうまくいく。そう、私以外は。
考えてみれば、私は幼い頃から人に恵まれなかった。それは生まれながらにしてのもので、それを裏付けるように、私の両親は毒親で、幼少期からひどい扱いを受けてきた。嫌な空気は母だけではなく、父にも伝染していき、家庭内を飲み込んでいく。物心ついた頃には父からは暴力を受け、母はネグレクト状態だった。両親のひどい扱いは、幼い私の心を壊すものだった。同級生も私から嫌なものを感じていたのか、学校へ行っても私の居場所はなかった。だが、それを知った祖父母が私を明るい場所へ救い出してくれた。中学卒業前に祖父母に助けられ、それからは両親には会っていない。祖父母曰く、両親はもう私に会えないらしい。私にはそれがよくわからず、いつまでも両親の影に怯えていたが、時間が経つにつれ、その恐怖も薄れていった。だが、ふとした時に暴力を受けていた頃の恐怖を思い出し、自分の意思とは関係なく、その闇はいつまでも私にまとわりついていた。
そんな過去があり、大きな声で怒鳴られることや暴力の現場を見るのは苦手だ。気分が沈んでいる時は、ドラマやニュースで大きな声やひどい扱いを聞くだけでも、過去を思い出してしまうほどだ。
私の上司になった陽司は、そんな過去も全て知っており、受け入れてくれた。仕事でミスをしても大声で怒鳴ることはなく、静かな声で淡々と注意をしてくれる。私はそれだけで働きやすかった。
それから1年、陽司と結婚が決まり、私は退職した。私が退職したのは、陽司が気遣ってくれたからだ。その頃、私は色々な仕事を任され、その中には大きな声で怒る人や大きな声で笑う人がいた。私はその度に不安になり、何も言えなくなってしまう。陽司は私のそんな現状を心配し、プロポーズをしてくれたのだ。「自分が養うから、今度は専業主婦になって自分を支えて欲しい」と言われた。私はその言葉に甘え、なんていい人と出会えたのだろうと思った。
しかし結婚後、いい人だった彼は幻になる。結婚して一緒に暮らし始め、陽司がだんだんと変わっていったからだ。私を養うために仕事をたくさんするようになり、その反動でストレスが溜まったのか、私を精神的に追い詰めていくようになった。結婚して2ヶ月経った頃には、私が何をするにもダメ出しをして、「俺がいないと本当に何もできないな」と言ってくる。毎日そんなことを言われると、私は本当にそうなんだと思い込むようになった。
さらに過去のトラウマも蘇り、逆らうと殴られるかもしれないという恐怖から、私は陽司に逆らうことができなくなった。陽司の言うことだけを聞いて、陽司のために生きる。この頃にはそれが私にとっての幸せなんだと完全に思い込んでいた。だから陽司に何を言われても何をされても、私はそれを正しいと思い受け入れた。陽司はそんな私を見て、ますますエスカレートしていった。
陽司の中での私は、いつの間にか何もできない弱い立場の人間になっていた。実際そうだった。私は恐怖で体がすくみ、現状を変えるための行動なんて全くできない。そのため誰かに相談するなんてことも思い浮かばず、祖父母も遠くに住んでいたため、私は幼少期に味わったあの孤独を、この結婚後に再び味わうことになった。
そんな生活が1年続いたある日、陽司は突然義母と一緒に暮らすと言い出した。陽司の両親はすでに離婚しており、義母は1人で暮らしている。さらに、すでに同居は決定事項で、明日からは義母が住むから、私の部屋を義母に使わせるという。私たちはそれぞれ部屋がある。結婚してから陽司は「誰かと一緒だと寝られない」と言い、別々の寝室を作ったのだ。そのため余分な部屋などはない。義母が私の部屋を使うということは、私は寝る場所がなくなるということだ。陽司は絶対同じ部屋は嫌だと言ったので、私は寝るところがなくなる。
「義母には少し待ってもらって、広い家に引っ越してからじゃダメなのか」と聞くと、陽司は「もう明日には来るんだぞ」と怒鳴った。私はますます困惑し、「部屋がなくなるのは困る」と訴えたが、陽司は聞く耳を持たない。戸惑う私に対し、陽司は「そもそも私の部屋なんていらないだろう」と言う。さらに「養ってもらっている立場なのに、1人で部屋を持っているのは贅沢だ」と非難し、「足が不自由な義母が1人で暮らしているのに心配じゃないのか」と言われた。私は陽司の言葉に納得してしまい、それもそうだと思ってしまった。
「お前の部屋は母さんに使ってもらう。お前は玄関でも寝ろ。」
「わかりました。」
結局、私に拒否なんてできることもなく、陽司の言葉を受け入れた。翌日、宣言通り義母が引っ越してきた。義母は私を見て「人気だ」と嫌な顔をし、「必要最低限以外は話しかけるな」と言う。私はそれも受け入れ、黙って従った。
義母が来て、私は部屋を失い、その日の晩から玄関で寝ることになった。夜の廊下は寒く、足先から冷えてくる。時々外の音も聞こえる気がして、その日は寝れなかった。私は自分を納得させるため、「これから玄関で寝ることになるのは辛いが、陽司は義母のことを真剣に考えているのだ」と思うように務めた。そして、私のことを養ってくれている上、義母のことまで気遣える陽司は素晴らしい人なのだと思い込む。寒い夜に玄関で寝れず、一晩中目が覚めて仕方がない時は、何度も暗示にかけるようにそう思うと、自然とその状況に慣れて少しだけ楽になった。
しかし辛いことはそれだけじゃない。義母と一緒に暮らすようになると、義母は典型的な嫁いびりをする人だった。家事は一切やらず、全て私に押し付け、私が少しでも義母の思いに添えなければ、ひどい言葉で文句を言ってくる。そんな私を見て、陽司は「出来の悪い嫁だ」と言い、義母と一緒に私を馬鹿にして笑った。
「息子の嫁にしてもらえただけでも感謝しなさい。」
義母に毎日そう言われ、私は陽司のいない日中も逃げ場がなく、ますます追い詰められるようになった。それでも私は「自分の出来が悪いからこんなにも言われてしまうんだ」と本気で思い、なんとか義母の気持ちに答えようと何でもした。どれだけダメ出しされ、やり直しをさせられても、一切文句を言わず黙々と言う通りにする。そんな私を義母は「薄気味悪い」と言い、私の作った料理にも文句をつけて食べてくれなかった。
ある日、義母が台所に立っていた。その時に陽司が帰宅。「どうして義母が料理をしているんだ」と言い始め、義母は「私の料理が食べれたものじゃないから、自分が料理を担当することになった」と言った。陽司はそれを聞き、私が日中義母に食事を与えていないと考えたのか、大声で怒鳴りつけ、「義母にひどいことをするな」とまくし立てる。そして陽司が仕事の鞄を勢いよく投げつけてきたので、私は受け止めきれずに足をひねった。それでも陽司は心配せず、「義母に料理を教えてもらえ」と命令する。私は反射的に謝罪をし続け、痛い足を引きずりながら台所に向かい、義母に「教えてくれ」と土下座した。義母はそんな私を見て鼻で笑い、その日から義母は料理中ずっと私を監視するようになる。私はそれでいいと思った。この時、完全に感覚がおかしくなっていたのだろう。
今日は上司が家に来ることになった。「昇進がかかっているんだから分かってるよな。」陽司からそんなメッセージが来たのは昼頃。私はそのメッセージを見てすぐに義母に報告した。義母は私に「下手なことをするな」と命令し、「最大限に持てなすため、今から買い物に行ってこい」と言う。私はその言葉に従い、食材やお酒を買い込んだ。何度か義母にダメ出しされ、スーパーを往復することになったが、無事夜までには間に合った。
そして陽司が帰宅と同時に上司を連れてくる。陽司が連れて帰ってきたのは、私の上司が陽司になる前、直属の上司だった藤田さんだった。藤田さんは課長に上がると同時に陽司に引き継ぎをし、私の上司が陽司になった。こんな藤田さんには私もとてもお世話になったものだ。藤田さんは変わらない様子で、久しぶりに会う私に愛想よく挨拶をしてくれる。その後リビングに案内し、義母が応対に呼び出された。
「変な行動を取るなよ。俺の昇進がかかってるんだからな。」
陽司は最後にそう警告してきたため、私は緊張して変に体に力が入った。リビングに戻ると、義母も陽司の昇進を応援するためか、藤田課長を手厚く持てなしていた。私も義母と用意した料理を運び、台所とリビングを往復する。義母はたまに台所にやってきて、あれこれと指示を出した。結局、私はずっと裏方でサポートし、藤田課長と話をする時間はなかった。せめて愛想よくしようと思い、藤田課長の近くに行く時だけ笑顔を意識する。だが、最近めっきり笑うことがなかったため、私は笑っているつもりでも、能面のように見えていたらしい。台所にやってきた義母に「愛想よくできないのであれば、台所から出てくるな」と言われてしまった。
藤田課長も心配したのか、さりげなく台所にいる私に話しかけ、「最近どうだ」と聞いてくる。気を使わせては申し訳ないと思い、当たり障りのない返事を返したのだが、陽司は鋭い目で私を睨み、藤田課長がお手洗いに向かったと同時に、すぐに文句を言いにくる。さらに陽司は感情が高ぶったのか、いつものように怒鳴り始め、私は身を縮めて謝った。
「俺の昇進を潰すつもりか。」
陽司にそう叱られ、私は平手打ちをされた。私は頬の痛みより恐怖で固まってしまい、声を失う。私はひたすら謝ることしかできないため、陽司の怒りが収まるまで謝り続けた。藤田課長が戻ると同時に、陽司はコロッと人が変わったように愛想良くなる。だが、頬が腫れて顔色が悪くなっている私を見て、藤田課長は顔をしかめる。そして「何かあったのか」と尋ねられ、私が「転んだんだ」と答えた。藤田課長は納得いかない顔だったが、陽司に「気にしないよう」と言われ、席に促されて戻っていく。私はほっと息をついて、黙々とお酒を運んだり、料理を運び続けた。
話の途中、藤田課長は次の日が休みだと言ったため、家に泊まることになった。陽司はすぐにリビングに寝床を用意し、「自分はここで寝るから、藤田課長はベッドを使ってください」と告げる。藤田課長が風呂に入っている間、私は陽司に呼びつけられた。
「俺は物音がしたら気になって寝れないから、お前は今日は外で寝ろ。」
「わかりました。」
そして夜、みんなが寝静まる頃、私は1日働き続けて疲れていた。陽司に言われた通り、外で寝るため、静かに玄関の扉を開けたのだが、夜の外は寒く寝る場所もないため、物音を立てないように玄関で寝ようと考えた。陽司たちが起きる前に起き出せば、私が玄関で寝ていたことはバレないだろう。そう思い、震えながら身を縮こまらせて毛布にくるまった。
しかし、そんな私の浅はかな考えは、意外な人物にバレてしまう。それは皆が寝静まった頃のことだ。たまたまトイレに起きた藤田課長が、玄関で寝ている私に声をかけてきたのだ。私はその時半分夢の中にいたため、陽司だと思い飛び起きた。心臓がバクバクとして、声をかけてきた人を確認もせず、小さな声でひたすら謝り続ける。土下座もして、伺うように顔をあげると、目を大きく見開いてこちらを見ているのは藤田さんだった。
私はしばらく息を飲んで固まっていた。取り繕おうにも焦ってしまい、上手な言い訳が思い浮かばない。そんな私を前に、何かを察した藤田課長は黙って私の体を起こし、そのまま家から私を連れ出す。藤田課長の行動が読めず、私は一体何をされるのか分からなかった。「捨てないでくれ」とだけ言い続け、私は恐怖で震えていた。
私の思いとは裏腹に、連れて来られたのは藤田さんの自宅だった。藤田課長が鍵を開けて部屋に声をかけると、奥から眠そうな顔で奥さんが出てくる。「泊まってくるんじゃなかったの」と尋ね、藤田課長の隣にいる私を見て驚く。私は何がなんだか分からず、とりあえず丁寧に挨拶をした。藤田課長はすぐ私について軽く説明し、奥さんは顔を曇らせている。私は藤田夫婦が気遣ってくれているのが分かり、どうお詫びをしたらいいのか分からなかった。このままでは陽司に怒鳴られて、また叩かれるかもしれない。そう考えて「今すぐ帰る」と言ったが、藤田さんの奥さんは私の腕を掴み、「事情を聞かせて」と穏やかな口調で訪ねてきた。断ることをしたらもっと迷惑をかけるかもしれないと思い、私は素直に従う。そしてリビングに案内されて温かな飲み物を手渡され、藤田さんの奥さんに「ゆっくり話すように」と言われた。
私はもらった飲み物を一口飲み、今まであったことを淡々と話した。「私が何もできないから、当然のことなんです。」私がそう言うと、藤田さんの奥さんは震えながら涙を流し、私を強く抱きしめてくれた。私が驚いているのも構わず、藤田課長の奥さんは労わる言葉もかけてくれる。私はその言葉を聞き、久しぶりに人の優しさに触れた気がしていた。ずっと抱きしめてくれていたため、私はついその温かさに身を任せてしまう。すると、ずっと張っていた緊張がほぐれ、私の中で何かがプツッと切れた。その途端、たくさんの感情が湧き上がり、今まで溜め込んでいた涙が目から溢れ、滝のように流れた。この時の怒りや悔しさ、悲しみや恐怖は、何と言えばいいのかわからない。
そして藤田夫妻と話し、私はようやくこの状況がおかしいと気づいた。これ以上あの場所にいたら、私の体は耐えられなくなるだろう。そう思った私は、陽司たちと離れたいと思うようになった。そのことを恐る恐る伝えると、藤田夫妻は全面的に協力すると言ってくれて、私はやっと動き出すことができたのだ。
幸い、夜は私の携帯を陽司が管理していて、今は手元にはない。もうすっかり日が登っていたが、携帯がないため、陽司から連絡が来ることはないだろう。そのため翌日になって、午前中に少し寝ることができた。起きてからは藤田夫妻はたくさん話を聞いてくれて、これから先のことも相談に乗ってくれる。久しぶりに穏やかな時間を体感し、私は1日中目頭が熱かった。
午後も中頃、私は陽司に殴られた顔や腕を病院で見てもらい、診断書を書いてもらった。そして夜になって、やっと自宅に戻る。私が戻ると同時に、家の中からバタバタと慌ただしい足音が聞こえた。どうやら私と藤田さんがいなくなり、陽司や義母がパニックになっていたようだ。玄関で佇む私を見て、陽司はすぐに暴言を浴びせてきた。
「役立たず、家を開けて何をしてたんだ?課長に迷惑をかけたんじゃないでしょうね。」
私は怒鳴られ、思わず肩を震わせた。しかし、そんな私の肩を後ろから出てきた藤田課長の奥さんが支えてくれる。もちろん藤田さんも後ろから現れ、陽司の前に立ちはだかる。陽司と義母は、藤田さんたちがいたことに驚き、呆然としている。
「え?ど、どうして?」
「話は全て聞かせてもらった。」
藤田課長がそう言うと、陽司はすぐにヘラヘラ笑い、「何のことだ」と白を切る。だが藤田課長はそんな陽司を睨み、「自分の母親もずっと父親からのDVに苦しんでいたため、女性を傷つける奴は許せないんだ」と一喝した。陽司はDVという言葉を聞き、慌てて否定。「私が嘘をついている。何かの間違いだ」と言い張ったが、藤田課長は厳しい顔をやめなかった。
「証拠もある。」
藤田課長が私に目配せをした。私はその視線を受け取り、持ってきていた診断書を陽司に見せる。そこには医師の診断と見解が書かれており、診断書はしっかりとした物証となっていた。陽司は診断書を見て、すぐ震え出す。
「お前、勝手なことをしやがって。」
陽司が顔を真っ赤にしてこちらを睨んできたので、私は恐ろしくてたまらなかったが、ここで縮んでいたら、この先いつまで経っても乗り越えることができない。私はこの時、自分の中にある勇気を振り立たせた。体はボロボロだったけど、不思議と痛みは感じない。それに私の背中には藤田課長の奥さんの手が添えられており、温かさとしてそれが伝わってきていた。その手に背中を押され、私は負けじと陽司を見つめ返した。
「私を解放してください。」
私は久しぶりに出た大声に、自分でも驚いた。陽司はもっと驚いていたようで、私を見て一瞬フリーズした後、動揺の遅れをごまかすようにわめき散らした。さらに陽司が腕を振り上げたため、藤田課長が危険を察知し、取り押さえてくれる。陽司の隣では義母が真っ青な顔で息を飲み、ふらりと壁にもたれかかっていた。
私はそんな2人に対し、「これから弁護士にお願いして、陽司たちに慰謝料を請求する」と伝えた。「もちろん離婚もする。もう2度と関わらないで」と言い残し、私は藤田夫婦と共に自宅を後にした。取り残された陽司と義母は膝をつき、悔しげに奥歯を噛みしめ、暗い顔で俯いていた。
その後、藤田課長から紹介された弁護士にお願いし、私は陽司との離婚を進めた。そしてDVが証明され、慰謝料を請求することができた。陽司はDV男だということが周囲に露呈。もちろん会社にもバレてしまい、昇進どころか会社にもいられない事態になった。最終的に職もなかなか決まらず、義母と2人で大変な思いをしながら生活しているらしい。
私は藤田夫妻に助けられ、本来の自分を取り戻すことができた。そして藤田課長の奥さんの知り合いの小さな会社の事務として務めることができ、毎日働きながら楽しく暮らしている。私はこの先、自分の両親や陽司のような人間に出会っても、もう負けないと心に誓う。それに藤田夫妻とは定期的に食事をし、近況を話す仲になった。2人は私にたくさんの優しさをくれた。私が辛い時やトラウマに震えている時、幼い頃の祖父母のように寄り添い、ずっと味方でいてくれると言ってくれたのだ。そのおかげで、私は新たにできたトラウマも徐々に克服しつつある。陽司から離れることを自ら選んだように、私は自分で選択することができる。そう思うと、自然と強い気持ちを持てるようになった。そしてある日気づいたのだが、怒鳴られても過去を思い出さない自分がいた。私は嬉しくてたまらなかった。私は今、心から笑うことができている。



