夫が残業だと言って帰りを遅らせた夜。友人から『知らない女とラブホテルに入っていくのを見た』と連絡が来たんだ。問い詰めると、夫は開き直った口調で『酔ってたから介抱してもらっただけだ』と言った。それで終わらせられると思ったのか。娘が18歳で大学に合格したばかりなのに、夫は平気で最低なことをする。しかも、夫の元妻との離婚も不倫が原因だと知ってしまった。娘はスマホのLINEを見つけてしまった。『また…

夫が残業だと言って帰りを遅らせた夜。友人から『知らない女とラブホテルに入っていくのを見た』と連絡が来たんだ。問い詰めると、夫は開き直った口調で『酔ってたから介抱してもらっただけだ』と言った。それで終わらせられると思ったのか。娘が18歳で大学に合格したばかりなのに、夫は平気で最低なことをする。しかも、夫の元妻との離婚も不倫が原因だと知ってしまった。娘はスマホのLINEを見つけてしまった。『また...

「大地、今どこ?」
「どこって会社だけど、今日は残業で帰り遅くなるって言っておいただろう。」
「嘘だよね。」
「はあ。嘘ってなんだよ。」
「私の友達が偶然見たって言ってたの。大地が知らない女とホテルに入っていくの。」

「ああ。あれだよ。あれ飲み会で酔ってたから解放してるだけ。」
「飲み会残業じゃなかったの?」
「飲み会も残業みたいなもんだろう。」
「じゃあ聞くけど、解放ってラブホで?」
「え、なんだよ。そこまで分かってたのかよ。もったいぶった言い方しやがって。」
「何その言い方?開き直ろうって言うの?逆に聞くわ。男女でラブホに入って何もないと思ってんの?」

「はあ、大したことじゃないって。」
「大したことじゃない?大地、あなたね、私と再婚してまだ3年だよ。だからたった3年で不倫って。しかもみゆちゃんが大学合格してすぐなのに。」
「いや、ミは関係ないだろ。」
「ついこの間家族でお祝いしたばかりじゃない。みゆちゃんになんて説明する気よ。」
「みゆだってもう18だろ。この程度のことでガタガタ言わないって。」
「そんなはずないでしょ。年頃の女の子が父親の不倫なんて知ったら。」
「ああ、はいはい。お前にはわかんないか。まあ、初詮は血のつがらない母親だもんな。」
「どういう意味?」
「ミゆはこれくらい慣れっこだってことだよ。俺がミの母親と離婚したのも不倫が原因だし。」
「何それ?私には教育方針の違いだって。」
「そんなの嘘に決まってんだろ。不倫して離婚しましたとか正直に言ってさ、お前は俺と結婚したわけ。」
「するわけないでしょ。」
「そういうことなんだよ。てかミで思い出したわ。」
「今度は何?」

その日はそれ以上話が続かなかった。私はリビングのソファに座ったまま、大地が寝室に消えるのを見つめた。頭の中では、みゆの顔が浮かんでいた。みゆは大学に合格したばかりで、昨日まで家族でお祝いの計画を立てていたのに。大地の考えていることが少しずつ見えてきた。みゆは私にどう思っているんだろう。もしかして、私のせいで父親の本当の姿を知っていたのか。

翌日、みゆが大学から帰ってきた。リビングに入るなり、私の顔を見て笑った。
「おかあさん、今日は何の顔してるの?浮かない顔してるよ。」
「何でもないわ。ただ、ちょっと考え事をしてたの。」
「ふうん。そういえば、お父さん、最近遅いね。仕事忙しいのかな。」
「うん、そうみたいね。」

みゆは何も知らない様子だった。私は話すべきかどうか悩んだ。でも、まだ確証もないし、みゆを傷つけたくなかった。それに、もし私が間違っていたら、余計な波風を立てることになる。

数日後、大地が帰ってくるのが早い日があった。リビングで私が一人でいると、大地が入ってきて、言った。
「なあ、ちょっと話があるんだけど。」
「何?」
「昨日のことだけど、あれは本当にただの飲み会だったんだ。その、俺が酔っ払ってて、同僚の女が介抱してくれたんだよ。ホテルに行ったのは、酔いを覚ますためだけだったんだ。」
「そんな説明、説得力ないわよ。もう知ってるのよ。私はあんたが嘘をついてるって。」
「嘘じゃないって言ってるだろ。」
「じゃあ、友達に聞いた話は何なの?あんたが女とラブホに入っていくのを見たって。」
「それは、その、誤解だって。」

私は立ち上がった。
「誤解?大地、私はもう呆れてるのよ。あなたがみゆの母親と離婚したのも不倫が原因だったんでしょう?今度は私と再婚してから同じことをしてるの?みゆはもう大学生なんだから、そういうことがばれたらどうなる思ってるの?」
「みゆだってもう大人だ。きっと理解してくれるさ。」
「理解?父親が浮気してるって理解する娘がいるの?」
「そりゃ、最初は驚くかもしれないけど、時間が経てばわかるさ。そういうこともあるんだってな。」

私はその言葉に何も言えなかった。大地の考え方はあまりにも身勝手だった。もしかしたら、私と結婚したのも、みゆのことを考えてのことではなくて、自分の都合だけだったのかもしれない。

それから何日かして、みゆは私に相談した。
「おかあさん、ちょっと話があるんだけど。」
「どうしたの?」
「最近、お父さんの様子が変なの。前よりずっと遅く帰ってくるし、スマホばかり見てるし。もしかして、何か隠してる?」
「そんなことないと思うけど。仕事が忙しいんじゃないかしら。」
「でも、おかあさん、知ってる?」
「何を?」
「私、この前、お父さんのスマホを見たの。女の人とのLINEのやり取りを見たの。『また会おうね』とか、『今日も楽しかった』とか書いてあったのよ。」

私は何と言っていいかわからなかった。みゆの目は真剣だった。
「おかあさん、知ってたの?」
「……ごめん。知ってた。でも、どうしたらいいかわからなかったの。」
「まさか、あの人、また浮気してるの?」
「たぶん、そうみたいよ。」

みゆは机に拳を打ち付けた。
「あの人、昔も母さんにそうしたんでしょ?私、知ってるんだ。父さんが母さんを裏切って、離婚したって。あの時も、こんな風に嘘をついていたんだ。」
「みゆ……ごめん。」
「なぜ謝るの?おかあさんが謝ることないよ。父さんが悪いんだよ。」

それからみゆはしばらく黙っていた。やがて、顔を上げて言った。
「私、ちゃんと話をしようと思う。父さんと。」
「みゆ、それ、やめた方がいいんじゃない?」
「いいえ、やるわ。もう黙ってるのは嫌なの。」

私はみゆを止めようとしたけれど、彼女の目は決意に満ちていた。

その夜、みゆは大地がリビングにいるときに、入っていった。
「お父さん、話があるんですけど。」
「どうした?」
「お父さん、また女の人と関係を持ってるんでしょう。」
「何言ってるんだよ。」
「嘘をつかないで。私はスマホ見たんだから。」

大地は一瞬、顔を硬くした。それから、ごまかすように笑った。
「何言ってんだよ。それは友達だよ。」
「友達?友達に『また会おうね』なんて送る?」
「そりゃ、親しい友達ならありえるだろ。」
「お父さん、私はもう子どもじゃないよ。あなたが母さんにしたことも知ってる。おかあさんにだって同じことをしてるでしょ?」
「お前、何か勘違いしてるんじゃないか?」
「勘違い?じゃあ、この前の土下座は何?おかあさんの前で土下座したんでしょ?」

大地は黙った。私はその会話をドアの影から聞いていた。みゆは続けた。
「もうこれ以上、人を傷つけるのはやめてよ。おかあさんはあなたを信じてるのに。私もあなたを信じてたのに。」

大地は何も言い返せなかった。しばらく沈黙があって、みゆは立ち上がった。
「私、今日は友達の家に泊まるから。」
そう言って、彼女は出て行った。

私はリビングに入った。大地はソファに座ったまま、顔を伏せていた。
「大地。」
「……悪かった。」
「そうね。でも、もう遅いわ。みゆに知られてしまった以上、どうするつもり?」
「……わからない。」
「私はもうあなたを信じられない。このまま続けるのは無理よ。」

大地は何も言わなかった。私は自分の部屋に戻り、荷造りを始めた。みゆが帰ってきたら、一緒にここを出て行くつもりだった。涙は出なかった。ただ、静かな怒りと、失望だけがあった。

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