第2部

数日後、私は黒田さんのデザイン事務所を訪れた。黒田さんは私の顔を見て、静かに微笑んだ。
「まゆみさん、いい顔になったわね。20年前のただセンスが良かっただけのあなたじゃない。今のあなたには痛みを知っている人間の深みがある。」
私は戸惑った。夫に「女として終わっている」と笑われ、自信を失っていた私に、才能など残っているのだろうか。
黒田さんは企画書を差し出した。「今度新しい大人向けのブランドを立ち上げるの。ターゲットは体型や年齢に悩み、自分を諦めかけている女性たち。私はこの企画の責任者をあなたに任せたい。」
私は震える手で企画書を受け取った。隠すための服ではなく、自分をもう一度愛せる服を作る——その言葉が、私の心に火を灯した。

私は新しいアパートを借り、夜な夜なミシンを踏んだ。体型を隠すだけの服は作らない。傷ついた女性が鏡の前に立ち、誇りを持って歩ける服を作る。
夫の高一は、私が去った後も平然と新しい人生を楽しんでいた。若い愛人リサと豪華な生活を送り、私の存在など忘れたかのようだった。
しかし、数ヶ月後、運命の同窓会の日が来た。私は自分でデザインしたワンピースを着て、会場に足を踏み入れた。会場は静まり返り、皆の視線が私に集まった。
高一は最前列に座り、若いリサを連れて勝ち誇った笑みを浮かべていた。彼は天才的な若いデザイナーが来ると聞き、ビジネスチャンスを狙っていた。
私がステージに上がると、高一の顔から血の毛が引いた。

「ま、まゆみ……?」
私はマイクを握り、静かに語り始めた。
「20年間、私は夫のために自分を後回しにしてきました。服を買うことも、鏡を見ることも怖くなり、自分を諦めかけていました。でも気づいたんです。年齢を重ねること、家族のために尽くした時間は、決して恥ずべきことではないと。だから私は、隠すための服ではなく、今の自分を愛せる服を作ろうと決めました。」
会場から温かい拍手が湧き上がった。高一は青ざめ、言葉を失っていた。
黒田さんが続きを語った。「まゆみさんの才能は、痛みを知っているからこそ輝く。彼女が作る服は、女性のコンプレックスを煽るものではなく、ありのままの自分を肯定するものです。」

高一のキャンペーンは失敗に終わり、彼の会社は信用を失った。リサは彼を見限り、去っていった。
数年後、私はブランドを大きく成長させ、たくさんの女性たちに「もう一度自分を好きになれた」と手紙をもらった。
ある日、病院の待合室で高一と再会した。彼は瘦せ細り、病に苦しむ姿だった。私は静かに通り過ぎた。彼の人生は自らの選択の結果だ。
私は今、息子たちと穏やかに暮らしている。過去の傷は癒え、新しい未来が広がっている。


