娘がSNSに全てを暴露した――父の不倫、盗まれた300万、そして5年前から始まった復讐の計画。父親は笑っていた。「俺は勝ち組だ」と。でも本当の勝者は、最初から決まっていた。娘が優しく笑って言ったんだ。「パパ、それ、私が全部やったんだよ」って。

娘がSNSに全てを暴露した――父の不倫、盗まれた300万、そして5年前から始まった復讐の計画。父親は笑っていた。「俺は勝ち組だ」と。でも本当の勝者は、最初から決まっていた。娘が優しく笑って言ったんだ。「パパ、それ、私が全部やったんだよ」って。

「おい、ちょっと待て。何だって?」
「SNS見たよ。パパ、やっぱり炎上してるね。ウケる」
「笑い事じゃないんだよ!店を奪った泥棒って、心当たりのないことで散々言われてるんだぞ」
「SNSでバズるのって、ストーリー性も大事なんだよね」
「ストーリー性?どういうことだ?」
「パパと私のLINE、それとパパと優香さんのLINE、全部SNSに上げたった」

娘の美優は、実の父親である大地に静かな笑みを浮かべた。

数日前まで、大地は有頂天だった。自分のレストランは回転1周年を迎え、美優の影響力でバズり、大繁盛していた。不倫相手の水希と共に、勝ち組人生を謳歌しているつもりだった。

「パパ、経営センスやばいね」
「だろ?才能だわ」
「うん。マジでお笑いの才能あるよ」
「は?お笑い?」
「経営センス。たがマジで言ってるの?」
「当たり前だろ。たった1年でこの繁盛具合だぞ」
「優香さんのレシピ盗んでさ、私のフォロワーに乗りしただけっしょ。バカでもできるから」

その言葉に大地は激怒したが、美優は微動だにしなかった。

「レビューは桜入れて操作してるんでしょ」
「は?そんなのしてねえし」
「実際SNSだとひどいよ。『SNS 料理はうまいけど女店員の接客度が最悪 2度といかない』って。女店員って水希でしょ。口コミ広がっててすぐに人来なくなるね」
「なんだよそれ」

怒涛の勢いで追い詰められ、大地は焦り始めた。しかし美優は続ける。

「安心して。すぐに対応するから。来月にはこの評価も逆転するって」
「なんだよ。それを先に言えよ。焦って損したわ」
「その時はパパはもうオーナーじゃないけどね」

翌日、美優はSNSにすべてを投稿した。娘の学費300万円を盗み、不倫相手とお店を開いた父親。そのレシピも元妻から盗んだものだった。美優の言葉は嘘ではなかった。事実だけを並べた投稿は、瞬く間に拡散された。

「お前、何やってんだよ!」
「自覚あんの逆にやば。父親がこんなのしてるとか、マジ無理」
「そんなのしたらこうなるのは分かりきってただろ!」
「パパのせいでしょ。私、一言も嘘とか投稿してないけど」
「こっちは迷惑してんだよ」
「それな。私はパパの娘に生まれてからずっと迷惑してんの」

大地が反論しようとした時、美優は核心を突いた。

「パパさ、私が経営学部受験した理由知らないっしょ」
「あ、知らねえよ。興味もない」
「私の実のママ、今も入院繰り返してんの。誰のせいでママが入院してると思ってんの?」
「あれはあいつが勝手に倒れて…」
「倒れるまで追い込んだのが誰か。元々体弱かったのにさ、パパが何回も不倫して精神不安定になって、挙げ句病気で入院したら離婚。ざけんな。じゃあなんでお前は俺についてきたんだよ。あいつのそばに行ってやりゃよかったろうが」
「そばに入れる状態じゃなかったじゃん。治療費もかかって働けない状態で、おじいちゃんたちもママの治療費でカツカツだし。そんなママを助けたくて経営学部入ったの。お金があれば一緒に暮らせるから。パパの言う下品な踊りもそのため」
「だからってこれは関係ないだろう。稼ぎたいなら勝手に稼いであいつのとこ行けよ。俺を巻き込むな」
「は、ママを追い込んだ奴を私が許すと思ってんの?ママの分もやってやろうと思ってたんだよね。優香さんには悪いけど利用させてもらった。あんたが再婚して何もしないとは思えなかったから」

大地は激昂したが、美優はまったく動じなかった。彼女は冷静に続ける。

「無理だから。そんな頭があったらこんなバカなこと最初からしてない。優香さんを利用して、私を利用して。全部他人の力じゃん。下品な踊り踊ってる恥ずかしい娘に頼ってたんでしょ。恥ずかしいのはどっちだよって話。やってることが卑しいんだよ」

10分後、大地は優香に電話をかけていた。

「ゆうか、お前これ知ってたんだろ?SNSの炎上?」
「そりゃそうよ。私とのLINEもさらされてるんだから」
「何勝手に言ってくれてんだ。このままじゃ俺は破滅だぞ」
「ねえ、大地。あなたに学費使われた日、みゆちゃんが私に何て言ったかわかる?」
「知るかそんなこと」
「あの子、私の時間を1年くださいって言ってきたの」
「は?1年?」
「LINEではふざけた感じだったけどね。家に帰ってきてすぐに土下座して頼んできたの。『いつも笑ってて表裏してるみゆちゃんが真剣な顔で、取られた300万は取り返します。それ以上のものもあげますから力を貸してください』って」
「ちょっと待てよ。300万を取り返す以上のもの?どっから出てくるんだ、そんなもん?」
「もちろんあなたからよ」
「俺から?まず慰謝料って言ってきたけど、あの300万は私のです。それを変換請求します。1年間私は繰り返し変換を求めたわね。知っててあなたは拒否してきた。悪意ある戦友と判断して延金も請求します。加えて慰謝料300万」
「ふざけんな。そんなの相場以上だろ。不服請求だ!」
「何のために1年間籍を入れたままにしてたと思ってるの?」
「それはお前が俺に未練があったからじゃ…」
「あら、やだ。気持ち悪。1年間私は1度も不倫を認めてないわよね。それを知っていながら1年間不倫を続けたでしょう。相場以上の金額になる理由はそれ」
「じゃあ離婚しなかったのは…」
「パパならどうせ払わないし不倫もやめないなら、そっちの方がお得だって。みゆかもそう言ってたわ。あと婚姻関係を続けた理由がもう1つ。別居中も収入の多い方が婚姻費用を払う義務があります。収入の多い方、あなたよね。お店随分と繁盛していたみたいだし。あなたの収入なら1年分で150万だそうよ。全て合わせて770万の請求になります」
「770万って…そんなの無理だ。水希のやつが散財してたし、店を売って…」
「お店くれない?」
「え?」
「お店の権利を770万で売るか、お店を維持して払うか。あなたの選べる道は2つに1つです」

大地は呆然とした。優香は冷たく続けた。

「お店の評価かなり落ちてるんでしょ?炎上したばかりだものね」
「あの炎上もこれを狙ってたのか…」
「ストーリー性が重要らしいわね」
「それって美優が言ってた…」
「盗まれたお金とレシピを取り返してお店を手に入れる。オーナーが正しい人になる。評価は逆転するってね」
「1年前からこうなることが決まってたのか。俺がお前を裏切ったから…」
「違うわよ。みゆちゃんの実のお母さん、前の奥さんを捨てた。5年前から決まってたの。その時に娘に捨てられたのよ、あなたは」

1ヶ月後、優香と美優は新たなレストランの準備を進めていた。

「ゆ香さん、お店の準備は順調。みゆちゃんのおかげでね、SNSでも随分と応援されてるのよ」
「知ってる。悪い評価は全部パパが持ってっちゃったから」
「みゆちゃん、これは聞きたくないと思うんだけど。大地のこと。お店を私に渡した後、貯金もなかったみたいだね。不倫相手の水希さんと一緒に借金生活らしいわ」
「ざまぁ」

美優はそう言った後、少しだけ表情を緩めた。

「そっちはどう?お母様とは?」
「ママ、最近になってようやく退院できてさ、一緒に暮らすことになったみたいな」
「そうなの?良かったじゃない?」
「おじいちゃん、ママのお父さんね、にもすごい謝られちゃった。『孫が苦しんでるのに助けられなかった』って。ママの治療費があってそれどころじゃなかったのにね。私が迷惑かけたくなくて頼らなかったのも悪いし。1番悪いのはパパじゃん。でもまあ、母子そう様ってよかったわね」
「良かったけど…うーん」
「どうしたの?」
「ゆかさんさ、マジでごめんね。利用しちゃったし、迷惑かけちゃったし。なんか私の都合で振り回してさ。マジごめん。私って3年だけだったけど、あなたの母親だったわよね」
「あ、うん。あなたも3年だけは私の娘だったでしょ?」
「それはそうっしょ」
「なら迷惑かけたとか巻き込んだとか全部どうでもいいよ」
「え、でも…」
「みゆちゃんはお母さんと暮らせるようになって幸せ?」
「それはうん。幸せ。パパとのことも蹴りがついてすっきりしたし」
「それで十分。こんなのでも母親だったんだから、娘が幸せならそれでいいのよ」
「優香さんって、そういう性格してるよね」
「え、本当?どこが?」
「そういうとこ」
「どういうとこ?」
「うん。なんでもない」

しばらくの沈黙の後、美優が口を開いた。

「あ、そうそう。私って1年の時間をみゆちゃんにあげたでしょ?急に」
「うん。そうだけど」
「じゃあ次はみゆちゃんの1年もらっていい?」
「へ、マジ?」
「あと1年だけでいいから、仲良くなる時間が欲しいの。母親としてなんてわがままは言わない。だからお願い」
「ずるいって。それはぶっちゃけ、優香さんって私のこと苦手っしょ」
「う、ぶっちゃけるじゃん。たまに何言ってるかわからないし、グイグイ来る感じもちょっと苦手よ。私、こう見えて打ち気な性格してるから」
「なのに仲良くなりたいわけ?」
「私は料理人ですから、食わず嫌いはしないようにしてるの」
「何それ?今度さ、うち遊びに来てよ。ママに紹介したい。私を『もう1人のお母さん』だよって」
「だめ」
「ずるいのはそっちでしょう。行く。絶対」
「そっか。ありがと。これからもよろしくね、みゆちゃん」

その後、大地と水希はお店を失った後、絵に描いたような転落人生を歩んだ。繁盛していた頃に豪快にお金を使っていたようで、裏では借金まで作っていた。300万円の変換に一切応じなかったのも、そういう事情があった。SNSで盛大に炎上したこともあって、知らない人から後ろ指を刺される日々。しかも多額の借金まで背負い、喧嘩の耐えない生活だった。それでも離れないのは、離れたら余計に生活が苦しくなるからだろう。最後まで尊徳感情だけで動いて、寂しい人たちだった。

優香は無事にレストランを回転させ、売上も順調だった。両親に借りた美優の学費300万円もすでに返済済み。元々資産価値で770万以上のお店だったので、大きく得をした形だった。美優が宣伝してくれ、バイトとして働いてくれてもいる。今では看板娘として大人気で、フォロワーの方が会いに来たり、美優目当ての常連さんができたりしていた。美優の母も最近は体調が上向いていて、娘と一緒に暮らせること。それが何よりの力になっているのかもしれない。

優香はもう美優の母親ではない。血のつがりもなく、大地とも離婚して他人になった。それでも美優が「お母さん」と呼んでくれるなら、優香はいつまでもあの子の母親の1人として生きていきたいと思っていた。

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