「浮気してたくせに、何を逆切れしてるのよ」
かず彦は顔を真っ赤にして怒鳴り返した。先週の出張が嘘だとバレたのは、会社の同僚と偶然会ったからだ。私は探偵に依頼して、彼が女とホテルに入る写真を突きつけた。それなのに彼は「男として当然だ」と言い放ち、「愛嬌ゼロのバートはもう終わりだ」と捨て台詞まで残した。
離婚の話し合いの場で、彼は「俺は愛人の家にでも行ってくるわ」と笑いながら出ていった。私は両親に電話して、泣きながら報告した。母は「あなたの幸せが私たちの幸せよ」と優しく言ってくれた。家や住宅ローンのことは気にしなくていいと。
それから1時間後、私の携帯が鳴った。受話器の向こうから聞こえたのは、姑の声だった。
「みわさん、離婚するんですって? 新居の鍵、私たちがもらっても構いませんよね?」
私は言葉を失った。あの家を買うとき、姑は「私たちは同居しないから」と言っていたのに。まさか最初から、息子が家を手に入れるための道具として私を利用していたなんて——私は受話器を握りしめ、震えながら声を絞り出した。
「…お義母さん、それはどういう意味ですか?」
「だって、あなたが離婚するんでしょ? だったら、あの家は私たちのものになるのが当然じゃない?」
私は何も言えなかった。家を買ったのは私の夢を叶えるためだったはずなのに、どうしてこんな結末になるんだろう。でもそれ以上に、私はあることに気づいてしまった。かず彦が浮気をしていたのも、もしかしたら全て計画のうちだったんじゃないかって。
受話器を置いた後、私はスマホで離婚弁護士の連絡先を検索していた。でも本当にそれでいいのか、一歩踏み出す前に、もう一度だけあの写真を見返した。彼が浮気相手と一緒に写っている写真を。すると、その写真の奥に見覚えのある人物が映っていることに気づいた。
それは、前日に姑と一緒に喫茶店で話していた、かず彦の愛人だった。


