「は斗、どこにいるの?もう搭乗時間よ」
電話の向こうで息子は、ゲートの前で待っていると言った。私は人混みの中を必死に探したけれど、彼の姿はどこにも見当たらない。電話を切った直後、義理の娘からのLINEが届いた。「お母さん、は斗ならもうゲート通っちゃいましたよ」。意味がわからなかった。今日は三人でハワイへ行くはずだったのに。
「どういうこと?あんたたちだけ行くって言うの?」
「だってお母さん、お金出してくれたし。350万もらったからもう用済みでしょ。カードも借りてるし。お母さんは一人で帰ってください」
私はその場に立ちすくんだ。クレジットカードは、飛行機の予約をするために彼らに預けたものだった。まさか暗証番号まで盗み見られていたなんて。10分後、何度も電話をかけてようやく繋がった息子は、さらに残酷な言葉を吐いた。
「母さん、もう金ないだろ。それに世間体も悪い。この先、介護で金使うとか無理だわ。金がないなら一緒にいる意味もない。ババアの面倒なんて見たくないから、もう連絡してこないでくれ」
空港のロビーで私は一人、スマホを握りしめたまま動けなかった。あんなに可愛がって育てた息子が、私を「ババア」と呼び、金づるが尽きたから捨てるのだと言う。予約を任せていたのは、最初からこの日のための計画だったのだろうか。
ホームに帰ると、同僚のり子さんが心配そうに声をかけてきた。私は泣きながら全てを話した。彼女は「本当にそれだけでしょうか?」と首を傾げた。何か引っかかると言う。私は不動産収入があるから、決して貧乏ではない。なのに息子は私を貧乏だと思い込んでいた。なぜだ?私はその疑問を抱えたまま、彼女の調査を待つことにした。り子さんが調べた結果、ある驚くべき事実が浮かび上がってきた。
「お母さん、機械に弱いから簡単だったよ」——は斗はそう言って笑ったという。最初から私を騙すつもりだったのか。その夜、私は自分が長年誤解していたある真実を知ることになる。



