「運営者、実は男性なんですよ」
そう言って笑ったのは、私が7年間運営してきたLINE劇場というチャンネルの運営者だ。視聴者のほとんどは女性で、ライターも女性が多い。だから、声を出して直接話すのは今回が初めてだった。
「緊張してます。コメント欄でしか触れ合ったことなかったので」
ライブ配信を始めたきっかけは、コミュニティ投稿で「こういうのどうですか」と聞いたら、予想以上に反応があったこと。785票も集まり、8割以上が「見たい」と答えてくれた。それなら直接話を聞いた方がリアルな反応が分かると思ったのだ。
「今日は30分くらいの予定です。LINE劇場の誕生秘話とか、制作の裏側とか、あとアンケートも取りたいなと」
チャンネルを始めたのは2019年。きっかけは『嫌われる勇気』という本に書かれていた「すべての悩みは人間関係の悩みである」という言葉だった。無人島に一人でいたら、容姿や学力やお金で悩むことはない。比較対象があるから悩む。人間関係があるからこそ、悩みも生まれるし、楽しみも生まれる。
「実際に社会にいると、『こんなやついるの?』っていう悪役みたいな人、いるじゃないですか。そういう人たちとの人間関係の中に、ドラマが詰まってると思うんです」
当時YouTubeでは、2ちゃんねるのスレッドをテキストベースの動画にするチャンネルが流行っていた。そこで思いついたのが、LINEのやり取りを覗き見するような形式の動画。日常に馴染みのあるツールだからこそ、リアリティのある人間関係を描けると思った。
「やばい人たちをちょっと誇張して描きながらも、人間関係の悩みにどう向き合うか、どう対処すべきかを考えるきっかけになればと思って作ってます」
作品ごとに裏テーマを設定している。40年連れ添った夫婦の熟年離婚の話なら「長く一緒にいたパートナーへの感謝を忘れた時に何が起きるのか」。再婚家庭の確執の話なら「お金で支えているのに家族として認めてもらえない苦しさ」。臓器提供者が実は虐待されていた姉だった話なら「見た目で人を判断することの怖さ」。
制作の流れは、まずテーマを決め、キャラクター設定を深掘りする。性格や口調、価値観を考え、「なぜこういう性格になったのか」と過去を想像しながら、リアリティのある一貫したキャラを作る。その後、4、5人の専属ライターがリサーチしながらプロットを書き、登場人物の心情を一つ一つ作り込む。最後に声優さんに台本を渡し、声を付けてもらう。
「声優さんは一人で、女性の方です。声の使い分けがすごく上手で、特に感情表現が得意な方。キャラクターが思ってるであろう感情を意識して読んでくださいと伝えてます」
編集にもこだわっている。BGMの音量調整や、最新のLINEの機能っぽい表現へのアップデート、吹き出しも一つ一つ丁寧に編集している。視聴者からのコメントで改善してきたことも多い。
「コメントはいつも読ませてもらってます。率直な意見がすごく助かってます」
ここでアンケートを取ることに。まずは「ハッピーエンドとバッドエンド、どっちが好き?」
結果はハッピーエンド95%、バッドエンド5%。
「意外と5%いるんですね。バッドエンドがいいって」
次は「強気キャラと弱気キャラ、どっちが好き?」
「弱気キャラっていうのは、最初は弱々しいけど後半に反撃して強気に攻めていくようなキャラです」
結果は強気キャラ64%、弱気キャラ36%。
「強気キャラの方が人気かなと思ってたんですけど、そうでもないんですね」
「最後にどんでん返しがある感動する話」と「笑えるスカット話」のアンケートでは、どちらも好きという人が50%。痛い目に合うか、改心するかという質問では、痛い目に合うが52%、どっちもありが39%、改心するは9%だった。
「改心はめちゃくちゃ少ない。やっぱり皆さん、スカットしたいんですね」
登場人物の人数については、3人以下が46%、何人でもいいが36%、5人以上が18%。
「うちはそんなに多くしてなかったんで、良かったです。音声だけ聞いてると、5人以上は誰が誰だか分からなくなっちゃう時があるんで」
好きなジャンルのアンケートでは、夫婦・離婚系が34%、嫁姑トラブル系が28%、浮気・不倫系が28%、親子・兄弟姉妹系が10%。
「親子系が意外と少ないんですね。確かにうちは夫婦とか嫁姑とか浮気系が多いんで、バランスとしては合ってるのかもしれない」
コメントでは「夫婦の信頼の崩壊とか、嘘が積み重なった先に失うもの」というテーマの作品や、「陣痛が始まったので病院までの送迎をお願い」という100万再生を超えた作品が挙がった。
「人によって実体験があるかないかで好きなジャンルは変わるのかもしれないですね」
最近はキャラクター作りに力を入れている。スカット外国人のマイク、弁護士の秋田さん、たまきおばあちゃん、天才兄貴など、人気キャラを育てている。
「キャラ物ばかりやっても飽きちゃうと思うので、定期的に、例えば月に1本とか上げていこうかなと思ってます」
視聴者からは「マイクと秋田弁護士のコラボが見たい」という声も。
「確かにコラボはやったことないですね。面白そう。2人がスカットでボコボコにするみたいな」
声優さんへの一言も募集した。
「声優さんには本当に助けられてます。キャラクターに命を吹き込んでくれるというか。『このキャラの声が好き』とか、何でも嬉しいので、コメントに書いてもらえると」
動画数は累計1500本ほど。7年間の活動で、かなりの数が溜まっている。
「旦那さんキャラがない」というコメントには「確かにないっすね」と笑いながら返していた。
今後の企画として、人気動画のベスト10を作ることを考えている。視聴者アンケートを取って、本当に面白いと思っている動画のトップ10を定期的に出す。声優さんが各動画のコメントを読み上げたり、ベストコメントを選んだりするのも面白いかもしれない。
「シリーズを見たいと思った時に、その動画を見れば一通り全部見れるような、再生リスト的な考え方です」
最後に、運営者からお願いがあった。
「LINE劇場の動画を丸ごとパクってるチャンネルがすごく多いんです。登録者1000人以下で、再生数が数千とか、そういうチャンネルは大体マルコピーです。見かけたらスパム報告してもらえると助かります。気が向いた時でいいんで」
報告によって大元のチャンネルが削除される事例は結構あるらしい。
「何も問題ないのは別にいいんですけど、あまりにも増えて他のチャンネルに迷惑をかける場合があり得るんで」
配信は予定の30分を大幅に超え、1時間50分ほどになった。
「こんなにコメントもらえると思ってなかったんで、正直めちゃくちゃ楽しかったです」
視聴者からは「続編を作る時は前作のリンクを概要欄に貼ってほしい」というリクエストや、「公式ホームページがあれば安心」という声も。
「毎日来ても毎日違った面白さを体感できる動画を作りたいと思ってます。視聴者の皆さんと一緒にチャンネルを育てていきたい。直接やり取りすると、『意外とこういうのが好きなんだ』とかが肌感で分かって、すごく勉強になりました」
「引き続きよろしくお願いします」
そう言って、運営者は初めてのライブ配信を締めくくった。



