「ねえ、私、心筋梗塞で明後日手術を受けるの。お見舞いに来てくれない?」そう言ったのに、長男は「仕事だから無理」と断った。でも、その日の電話で義理の娘が言ったの——「明日からハワイ旅行なんですよ」。嘘をついてまで私を捨てた息子。それでも私は手術を乗り越えた。そして、迎えた仕返しの日。私は息子への仕送りを完全に止めた。それだけじゃ済まなかった——あの時、私はまだ本当のことを知らなかった。

「ねえ、私、心筋梗塞で明後日手術を受けるの。お見舞いに来てくれない?」そう言ったのに、長男は「仕事だから無理」と断った。でも、その日の電話で義理の娘が言ったの——「明日からハワイ旅行なんですよ」。嘘をついてまで私を捨てた息子。それでも私は手術を乗り越えた。そして、迎えた仕返しの日。私は息子への仕送りを完全に止めた。それだけじゃ済まなかった——あの時、私はまだ本当のことを知らなかった。

「裕二、私、心筋梗塞になったみたいなの」
「はあ?何それ?マジで言ってるの?」

いきなり胸が痛くなって、救急車で運ばれて、検査を受けたら心筋梗塞だって言われた。今は薬で安定しているけど、明後日にはバイパス手術を受けないといけないらしい。

「手術?しかも明後日?」
「そうなの。やらないと命の危険があるって」
「大丈夫なのかよ」
「わからない。でも手術なんて初めてで…病院は苦手なの。お父さんが亡くなった時の記憶があるから、入院するのだって本当に怖いわ」

「大丈夫だよ。手術をすれば治るんだろ」
「裕二の顔が見たいわ。病院に来てくれない?」
「それは無理なんだ。仕事が忙しくて」
「手術の日は?」
「行きたい気持ちは山々だよ。でも無理なもんは無理だ。休んだら生活ができなくなる」

「そんな…」
「大人なんだからしっかりしてくれよ。それに俺だけじゃなくて勝彦がいるだろう。あいつは独身で好き放題してるんだから、お見舞いくらい来られるだろう」
「勝彦はそうかもしれないけど…もしかしたら会えるのは最後になるかもしれないの」
「それはそれで仕方ないって」

「仕方ないなんて言わないでよ」
「とにかく俺は今の生活を守るのに精一杯なんだ。母さんのことまで考える余裕はない。俺は国子のことだって守らないといけないし」

「分かった。そうよね。ごめんなさい」
「きつい言い方しちゃったけど、俺だって行きたくないわけじゃないんだ。仕事だからしょうがないって言ってるんだ」
「うん。無理しないで頑張ってね」

電話を切った後、今度は勝彦に連絡した。
「私、明後日に手術を受けることになったわ」
「え?手術?何を言ってるんだよ。この前会った時は元気だったろ」
「ついさっき胸に痛みがあって、検査を受けたら心筋梗塞だって診断されたの。それで明後日に手術をしないといけなくなったわ」
「心筋梗塞でも今は大丈夫なんだろ?」
「なんとかね」
「分かった。今から病院に行くから住所を送ってくれ」
「今から来てくれるの?仕事は?」
「そんなの休むって伝えるから大丈夫だよ。俺は有給もたくさん残ってるし。手術の日も必ず行くからね」

「ありがとう。本当に嬉しいわ。情けないけど、一人でここにいるのは心細いの」
「分かるよ。父さんが亡くなってからずっと病院自体がトラウマみたいになってたもんな」
「実は裕二にも連絡をしたんだけど、忙しいから来られないって言われちゃってね」
「は?母さんが入院してるのに。手術の日も仕事だから無理だって言われたの?」
「ありえないだろ。俺たちがどれだけ親に世話になったと思ってるんだ。それなのにこんな一大事に仕事を優先するなんて」
「私も最初はそう思ったけど間違ってたわ。あの子には家族がいるのよ。家族のために頑張って仕事をしないといけないから」
「1日も仕事が休めないってどういう状況だよ。そんなに追い込まれてるとしたら、それはもう兄さんが悪いだろう」
「やめて。もう私は納得してることだから。私のことなんかで裕二を不幸にしたくないわ」
「そんなことないって。絶対になんか裏があるに決まってるよ」
「お願い。これ以上は何も言わないで。ただでさえ精神的に辛い時なの」
「ごめん」
「私にとっては勝彦が来てくれるだけでも本当に嬉しいことだから。心強いわ」
「とりあえず俺はすぐに病院に行くよ」
「うん。待ってるわね」

その5分後、今度は長男の嫁・亜由美から電話がかかってきた。
「お母さん」
「あら、亜由美?あなたから連絡してくるなんて珍しいわね。どうしたの?」
「裕二から何も聞いてないの?」
「何も聞いてませんよ。それよりも今日はちょっとお聞きしたいことがありまして」
「どうかしたの?」
「明日からハワイ旅行なんで、何かお土産とか欲しいのありませんか?気が向いたら買ってこようと思ってるんで」

「ハワイ旅行?」
「そうですよ。前から計画していたんです。今回はいつものオアフじゃなくて、他の島に行く予定なんで楽しみなんですよ」
「仕事じゃないの?」
「仕事なんてしてたらハワイに行けませんって。変なことを言わないでください」
「嘘よ…私は裕二から仕事だって言われてたの」
「意味がわからないです。何を言ってるんですか?」
「私、心筋梗塞になって手術をするのよ。それでお見舞いに来て欲しいと言ったんだけど、仕事だから無理だって断られたのよ」
「へえ、そんなことがあったんですね。でも断って普通だと思いますよ。どうしてわざわざ私たちがお見舞いになんて行かないといけないんですか?お母さんが手術しようが、私たちに関係ないんで」

「ひどい言い方ね」
「そりゃ血のつがりもないんだから当然でしょう。私の両親が手術するんだったら、当然旅行なんて全部キャンセルしますけど。あなただったらしませんよ」
「そう。分かっていただけて本当に嬉しいです。じゃあお土産はどうしましょうかね?買ってきても、お母さんがあの世にいるんじゃ渡せないんで、なしでいいですか?」
「そんなことがよく言えるわね。冗談で済まされるようなことじゃないわよ」
「冗談じゃないですよ。本気で言ってるんです。少しでも節約をしておきたいんです」

「別にお土産なんていらないわ」
「そうですか。あとくれぐれも旅行期間中は連絡しないでくださいね。ハワイを満喫してるんで」
「分かったわ。頑張って」

電話を切って10分後、裕二からまた電話がかかってきた。
「仕事っていうのは嘘だったのね」
「え?何だよ」
「さっき亜由美さんから連絡があったのよ。そうしたら、あの子がハワイに行くって言ってたわ」
「ああ、そうだよ。何か問題でもあるのか?俺が行かないことがそんなに悪いことか」
「別にそのことを怒ってるわけじゃないの。でもどうして嘘なんてつくのよ」
「ハワイ旅行に行くからって言ったら、どうせあんた文句言ってくるだろう。俺たちがこの日をどれだけ楽しみにしてたか。あんたのせいで気分が台無しだよ。変なタイミングで病気になんてなりやがって、もっと俺たちのことを考えてくれよな」
「私だってなりたくてなったわけじゃないわよ」
「うるせえなあ。頼むから手術が失敗して死ぬなんてことは勘弁してくれよ。そうなると、いよいよ帰国しないといけなくなるだろう」
「どうしてそんなひどいことを言うの?私のことは何にも心配してくれないわけ?」
「俺たちは自分のことだけで精一杯なんだよ。あんたがどうなろうと知ったこっちゃないんだ」
「そう。あなたがそう言うなら仕方ないわ」
「俺たちの邪魔だけはするな。もう極力俺たちに関わらないようにしてくれよ」
「それがあなたの本音なのね」
「そうだ。俺は父さんには色々と感謝してるが、別にあんたには何の感謝もしてないから。俺たちの生活を支えてくれたのは父さんだよ」
「もういいわ。これ以上何も聞きたくない」
「そうかよ。それじゃあな」

1ヶ月後、裕二からまた電話がかかってきた。
「おい、これはどういうことだ?」
「あら、何よ。あなたから連絡するなんて珍しいわね。もしかしてハワイのお土産でもくれるのかしら?」
「憎まれ口叩けるくらいには回復したみたいだな」
「おかげ様で。手術は無事に成功したのよ」
「そんなことはどうでもいいんだよ。仕送りを止めたな」
「そうね。それがどうかしたの?」
「俺が父さんから毎月もらっていた仕送りを、あんたが止めたんだな」
「それが何か問題?」
「当たり前だろ。どうしてこんなことをするんだよ。仕送りは俺と父さんとの間でやってたことだぞ。それをなんで止めたりするんだよ」
「それはもちろん知ってるわ。でもお父さんはもう天国に行っちゃったの。だとしても仕送りは続けるようにって言われたんだろ?『俺たちが困ってるなら助けてあげてくれ』ってさ。どうしてそんな父さんの思いを踏みにじるようなことをするんだよ」
「よくそんなことがあんたに言えるわね。自分がお見舞いに来られなかったからって仕送りを止めるなんてひどいよ」
「まず最初に伝えておくけど、仕送りをしていたのは私よ」
「は?何を言ってるんだよ」
「父さんのお金を送ってるって思ってるみたいだけど、それは大きな間違いだから。私が自分で働いて、そのお金を仕送りに使ってるの。あなたの生活が大変だと言うからね」
「母さんが…父さんの遺産じゃなくて?」
「違うわ。そんなこと私にはできなかったから」
「なんでだよ」
「父さんの遺産はあなたたち兄弟で分けるべきものよ。それなのにあなただけがもらってるのは不公平でしょ。でもあなたは生活が大変だと言ってたから、代わりに私が仕事をして仕送りをしていたのよ」
「そんなことをしてたのか…」
「そうよ。父さんの資産や保険金とかは一切手をつけてない。私が受け取ってはいるけど、できるだけ多くあんたたちに渡してあげたいと思っていたから」

「だとしても、なんで仕送りをくれないんだよ。嫌がらせみたいな真似はするなって」
「嫌がらせなんて私はしてるつもりはないわ」
「じゃあなんで仕送りを止めた?俺が見舞に行かなかったことを怒ってるからだろ」
「違うわよ。もうあなたには必要ないと思ったからよ」
「はあ?どこがだよ」
「生活に困ってるから仕送りをしていたのよ。それなのにどうしてハワイになんて行けるの?ハワイ旅行はすごくお金がかかることでしょ。どうしてそんなことが可能なのか教えてよ」
「いや、それは少ない額をちょっとずつ貯金して…それでハワイに行っただけだろ。俺たちはそんなこともすることはダメなのか?」
「貯金ができてるってことは余裕があるってことじゃない」
「そんな揚げ足を取るなよ」
「揚げ足じゃないわ。あなたがそう言ったのよ。ハワイに行けるくらいの貯金が作れるんでしょ。だったら私の仕送りなんて不要じゃない」
「マジかよ…」
「これからは仕送りなしで生活をしていきなさい」
「待ってくれよ。ハワイ旅行に思ったよりも金がかかったんだ。当初予定していた予算を大幅にオーバーしちゃって、今の稼ぎじゃ到底払えないんだよ」
「そんなの知らないわ。自分たちで何とかしなさい」
「俺たちを見捨てるのか?」
「私たちはもう赤の他人だって、亜由美さんが言ってたわよ」
「亜由美が…」
「そうよ。他人の私がどうなろうと知ったこっちゃないってね」
「俺は違うよ」
「じゃあなんで私のことを騙したの?最初からハワイ旅行だって言わずに騙そうとしたのはなんで?私のことなんて騙してもいいくらいのどうでもいい存在だって思ってたからじゃないの?」
「考えすぎだって」
「とてもそうとは思えないわ。あなたの行動は血のつながった息子のやることじゃない。だから私はあなたのことを他人だって思うようにしたから」
「おい、マジかよ」
「他人に仕送りなんてする必要はないわ。それじゃあさようなら」

30分後、今度は勝彦に連絡した。
「勝彦、大変なんだ。母さんと連絡が取れるように取り次いでくれ」
「何?金の無心でもするつもり?十分騙し取ったからもういいだろ」
「母さんから聞いたのか?」
「ああ、手術が終わった後にね。俺はそれまであんたが仕送りをもらってることすら知らなかったよ」
「そうか…知らなかったのか」
「おかしいと思ったんだよ。父さんが亡くなってから母さんがパートをし出してさ。『生活に困ってるのなら俺が面倒見ようか』って言ってもごまかされてたから、何かあるなとは思ってたけど、まさかあんたのためだったなんて」
「いや、それはちょっと生活に困ってて…」
「それは別にしょうがないと思うよ。でも、そこまで面倒見てくれた人が命の危機だって言うのに、よくハワイ旅行なんて行けるよな」
「どうしてもハワイだけは行きたかったんだよ。本当に楽しみにしてたんだ」
「ハワイなんてその気になれば後からでも行けるだろう。でも母さんとはもう会えないかもしれなかったんだぞ。それなのになんで旅行の方を選べるんだよ。あんたどうかしてるぞ」
「いくらかかってると思う?今回の旅行のために俺がどれだけ金を使ったか。それなのに無しになんてできるわけないだろう」
「これだって母さんの金だろ。そんなもんが言い訳になるか」
「それはそうだけど…」
「それに金と母さんの命で、なんで金を選べるんだよ。あんたはその程度にしか母さんのことを思ってなかったってことだろ。親を大切にできないやつなんて、俺は家族だとは認めないからな」
「ちょっと待ってくれ。母さんともう一度だけ連絡をさせて欲しいんだ。全部謝って、話ができないんだよ。俺の気持ちをもう1度だけ伝えさせてほしい」
「そんなことする必要はない。あんたがいくら口でいいように言っても、あんたの行動が家族をどう思ってるかを物語ってるんだ。そんな奴の手助けなんて俺はしない。2度と実家にも近づくんじゃないぞ。もしそんなことをしたら、俺があんたを力づくで追い出してやるからな」

翌日、今度は亜由美から電話がかかってきた。
「どうしてこんなことをするのよ」
「あら、あなたから。そうか。あなたもブロックしておかないとダメだったわね」
「ふざけるな。逃げるんじゃない」
「別に逃げてないわ。どうせお金のことでしょう?そんなことに付き合うのは面倒なだけよ。何を言われてもこっちの気持ちは変わらないからね」
「別に仕送りの件はどうでもいいのよ」
「じゃあ何?」
「あんた、うちの両親に余計なことを吹き込んだでしょ」
「ああ、そういうことね。昨日お土産を渡そうと連絡したら、『もう2度とうちの敷居をまたぐな』ってぶち切れられたのよ」
「確かに2人ともすごく怒ってたからね。あなた、告げ口なんて最低な真似よ」
「さすがに私だってそんなことまでしてないわ」
「じゃあなんでよ」
「手術の前日にあなたのお母さんから連絡が来たの。家族顔合わせで会って以来、とても仲良くなってね。ちょくちょく連絡を取っていたのよ」
「仲いいのは知ってたけど…」
「その時に手術をするって言ったら、わざわざ当日に夫婦でお見舞いに来てくれたの。その時にあなたたちがいないことを知って、勝彦に詳しい話を聞いたんだって。それを聞いて2人ともすごく怒っててね。手術が終わってから直接謝罪もされたわ。それで私は縁を切られたの」
「あら、そうなの?」
「お父さんがそう言ってるって。しょうがないわね。お父さんの判断だから従った方がいいんじゃない?」
「ちょっと待ってよ。どうして私がこんな目に会うのよ」
「家族を大切にできないからじゃない。あんたなんて他人よ」
「そう…でも、そんなことをしてるから本当の家族からも縁を切られるのよ」
「ふざけるな」
「私に怒られても困るわ。話をするのなら直接向こうのご両親にした方がいいわね。まあでも、聞いてくれるとは思わないけどね」
「これからどうしたらいいのよ。裕二が金に困ってても、私はいざとなったら離婚して実家に帰れば済むと思ってたのに」
「あなたって本当に色々な人と縁を切るわね。それってあんまりいい趣味とは思わないわよ」
「趣味なわけないでしょ」
「まあ、どちらにしてもあなたがどうなろうと私は知ったこっちゃないわ。もう私たちは赤の他人だから、連絡はできないようにするからね」
「待ちなさいよ。仕送りの話をしましょうよ」
「いやよ。他人のあなたに話すことなんて何もないわ」

2週間後、裕二から電話がかかってきた。
「裕二?」
「金のことで話があるの」
「また送ってくれるのか?」
「違うわよ。誰がそんなことをするもんですか」
「じゃあ何だよ」
「今まで仕送りで送ってたお金を返還してもらおうと思って」
「は?何を言ってんだよ。返還だと?」
「そうよ。きっちり全額返してもらうわ」
「ふざけるな。そんなもん返すか。あれはあんたたちが俺にくれたもんだろうが。それを返せなんて意味が分からねえんだよ」
「これは弁護士さんとも相談して決めたことよ。あなたの家に内容証明郵便で請求書を送らせてもらった。ちゃんと返還をよろしくね」
「なんでだよ。そんなこと許されるわけがあるか。裁判でも何でもしてやるからな」
「そう。でもあなたは負けると思うわよ」
「なんでだよ」
「だってあなた、私たちを騙して仕送りを受け取ってたでしょ」
「何を言ってるんだ?」
「ハワイ旅行に行ってたじゃない」
「だからあれは時間をかけて貯金をしたんだ」
「でも亜由美さんがおかしなことを言ってたわ。『ハワイに何回も行ってたから、今回はオアフじゃなくて他の島に行ってみようと思う』ってね。なんだかハワイによく行ってる人みたいな口ぶりよ」
「それは見栄を張ったんだよ」
「そう。実はあなたたちのSNSを見つけさせてもらったわ。夫婦でアカウントを持ってるのね」
「嘘だろ?なんでだよ」
「私はこういう今時なのは知らないんだけど、勝彦が見つけてくれたのよ。そうしたらあなた、かなり羽振りのいい暮らしをしてるわね。高そうなブランド物を買ったり、2人で高級レストランに行ったって自慢してたわよね。あんなの普通に働いてるだけじゃ無理よ。私たちのお金をこんな無駄なことに使うなんて」
「これで『生活に困ってる』って父さんに泣きついたのも嘘だったってことが証明されたわ。だから返せってことか」
「そうよ。私たちはあなたたちの生活のために仕送りをしていたの。無駄遣いをさせるためじゃないわ」
「昔のことだろ。ぐちぐち言うなよ。親子なんだから金をくれるくらい普通だ。それを返せなんて、そんなみっともないことを言うなよ」
「私は自分が騙されてただけなら何も思わなかった。でもあなたはお父さんのことも騙したわ。お父さんは病気で入院してる時もずっとあなたのことを心配していた。私にも『あなたのことを守ってやってくれ』ってお願いをしてきたわ。なのにそれが全て嘘だった。お父さんは騙されたまま天国に行ったのよ」
「こんなことをされたら私だって黙ってはおけないわ。2度とあなたとは関わりたくなかったけど、やったことの責任だけは取らせるから」
「ちょっと待ってくれ。金はもう払えないって。今までの仕送り金額ってとんでもない額だぞ」
「そうよ。あんたはそれを騙し取ってたの」
「俺たちの生活がどうなってもいいのか?」
「他人がどうなろうと知ったこっちゃないわ」
「頼むよ。一度話だけでもさせてくれ」
「やめてよ。何かあるのなら弁護士にしてください。お願いだから、だるい連絡はしてこないでね。私はこの救われた命を大切に、この先の人生を満喫するつもりだから」

その後、私は友人に今までの仕送り全額の返還を請求しました。そのせいで裕二の生活は経済的に苦しくなってしまったそうです。こんな時こそ私たちを頼りにすればよかったのに、もう私たちはいません。となると頼れるのは消費者金融だけでした。結果、今は多額の利息を返済するために昼夜問わず仕事をしているとのこと。今の状態であれば、お見舞にも来られないと言われたら、仕方ないなと思うんですけどね。

ちなみに亜由美さんは、借金だらけの裕二と離婚して一人で生活を始めたみたいです。ただ借金がないだけで、生活は苦しいようですね。近所の喫茶店にはパンケーキが置いてあるそうですが、それすら今は食べることもできず、いつも眺めることしかできないと聞いています。

一方の私は無事に退院して、元気に生活しています。一度死に直面したことで人生観が大きく変わりました。夫を亡くして後ろ向きになっていたのですが、命があるのならたくさんの思い出を作りたいと思うようになりました。していつか天国に行って、夫にたくさんの土産話をしてあげたいなと思っています。

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